Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「……誰にでも優しいんだと思うんです。私だけ特別なんてあるはずがないんです」
「俺も、そう思われてるってことかな?」

 そう問われて、紗綾は自分が言葉を間違えたような気がした。

「えっと……だって、将也先輩は物凄く後輩思いで、香澄のことだって……だから、私のことも庇ってくれるんですよね?」

 紗綾はずっとそう思っていた。
 彼は数少ない紗綾の味方であり、陸上部員達をも味方にしてくれた。
 誰もがオカ研を、魔王黒羽十夜を恐れているが、将也はそれが間違いなのだと説き続けた。たとえ、自分が異端視されることになろうとも。
 それでも、自分を貫き通すからこそ彼は信頼されている。

「君が田端君の親友だから、庇っているわけじゃない。ううん、庇ってるつもりなんてない。俺にとっては当然のことなんだよ。君が虐げられる正当な理由なんてどこにもないんだから」
「それは……」

 きっと、彼は誰かを見捨てることができない。いつだって親身になって聞いてきた。どんなに自分が辛くとも。
 だから、部員を通して知り合った後輩にもその態度は変わらない。
 それは刑事である兄将仁とも似ている。
< 304 / 712 >

この作品をシェア

pagetop