Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「でも、気持ちはわかるよ。圭斗君のことで責任を感じているよね? それに、君も黒羽のことが放っておけないんだよね? 君は優しい子だから」
「優しくなんかないです。流されて、何もできなくて、それだけです」

 十夜や嵐、八千草、或いは圭斗を裏切ることはできない。
 サイキックでも何でもない自分が裏切りなど滑稽かもしれないが、支配者の意に反することは反逆にも等しい。
 恐れなのか何なのかわからない感情がそこに道を塞ぐように横たわっている。
 だから、それは決して優しさではない。

「……黒羽部長のこと、みんな、誤解してるんです」
「そうだね。でも、黒羽はそれでいいと思っているんだろうね」

 十夜は他人に理解されたいと思うような男ではない。むしろ、今のまま突き放されていることを望む男だ。しかし、本当は違うように感じていた。
 誤解が解ければいいと思っているが、そのために何かができるわけでもなく、好きだからそう思うのかはわからない。
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