Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
 後ろには扉、魔窟への門があると言うのに駆け込まなかったことを紗綾は後悔した。

「さあ、追い付きましたよ、サヤ。これで、ゆっくりお話できますね!」

 まるで日溜まり、眩しいほどの満面の笑みで言われて、紗綾は自分の顔が引き攣るのを感じた。
 思わず後退り、その背が扉にぶつかる。
 圭斗も嵐も長身だが、彼もまた背が高く、威圧感を感じる。なのに、その顔は幼いと紗綾は思う。
 ふわふわの金髪にブルーグレーの瞳、地獄に天使が現れたようでもある。
 悪魔の生贄はなぜか天使に追いかけられていた。

「サヤ、ボクをムコヨーシにして下さい!」
「あ、えっと、その……」

 穏やかながら何かズレたことを言っているような気がする彼に紗綾はひどく困惑する。
 彼と出会ったのはほんの数分前、わかっているのは新入生であることと日本語が堪能である外国人らしいということに加えてはリアム・ロビンソンという名前だけだ。
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