Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「オカルト研究部の……クロバネジュウヤさん?」

 ローマ字で読みが書かれているのだが、野島の母の目には入らなかったらしい。

「クロハトオヤです」
「黒羽オフィス公認サイキック?」
「信じられないかもしれませんが、本物の霊能者です。私は助手みたいなものです」

 マイノリティーであること、それが十夜を苦しめている。わかっていても、否定されることが前提であるのは決して覆らない。

「そんなこと言われても……」

 野島の母も困惑している様子だった。

「何も変わらなければ、今まで通りに思っていればいい」

 十夜は言う。彼は信じられないならそれでいいと思うのだろう。彼は説得という苦手分野に労力を費やさない。
 それが霊障であっても、そうでなくても、やってみなければ何も変わらない。
 そして、たとえ、変わっても、無理に信じなくていいのだ。
 自分にできることをする。十夜にとってはそれだけのことだろう。

「部屋は?」
「こっちです」

 慌てて、野島が案内する。その後ろを十夜が黙ってついていき、紗綾も野島の母に一礼してから追った。
< 380 / 712 >

この作品をシェア

pagetop