Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「本当は、先輩にもお礼を言いたいんだけどよ……ダメなんだよな?」
「うん……ごめんね」

 昨日、紗綾が野島に渡した手紙には『全てを忘れるように』と書かれているのだ。
 オカ研が関与したことを決して他言してはならない。見たこと聞いたこと、その全てを夢だと思い、霊障相談以外では、今後部室には来るな、などと書かれている。
 礼は一切必要なく、嵐と十夜に、そういう目的で話しかけてはいけないことになっている。勿論、話しかけられたら、嵐も十夜も知らないフリをする。
 ただ何もかもを忘れて、今まで通り恐れることを強要する文書になっているのだ。
 だから、何度誰かを救っても、オカ研は遠ざけられ続けてしまう。
 評判になったところで意味はないのだ。本当に助けを求める人を救うには。
 それでも、心からの感謝が少しでも十夜に届けば……と紗綾は願わずにはいられない。感謝されたくてやっているわけではないが、いつだって彼の心は救われないままなのだ。
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