Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「ねぇ、あたしの腕時計見なかった?」
ふと近付く教室からそんな声が聞こえてきた。かなり大きな声だ。
その辺りには家庭科室があり、家庭科部のメンバーが文化祭の準備をしているはずだったと思い出す。
紗綾にとっては苦手な種の人間が多い部だ。生贄についてよく思っていない女子が多いのだ。それこそ、影でコソコソどころか、聞こえるような声で言われることも多い。
いつもはそこを通り過ぎる時だけ何となく早足になるのだが、今日は男の存在で忘れていた。彼もまた緊張感をもたらす存在だった。
「あー。あのカレシからもらったってやつ?」
「さっき外して、鞄の中に入れたと思ったんだけど……」
「ちゃんと探したの?」
「探したよ! でも、見つからないの、どうしよう……」
人探しになくし物、今日はそういう日なのかと思ってしまうが、紗綾には関係ない。
いつも通りさっさと部室に行こうと階段を上ろうとしたところで、彼がぴたりと足を止めた。
「すみません、ちょっと待っててください」
そう言って、彼は迷うことなく家庭科室に入って行ってしまう。
紗綾も慌ててドアの近くで様子を窺ってみることにした。
男について入っていく勇気はない。彼女達は紗綾の存在を決して歓迎しないだろう。
ふと近付く教室からそんな声が聞こえてきた。かなり大きな声だ。
その辺りには家庭科室があり、家庭科部のメンバーが文化祭の準備をしているはずだったと思い出す。
紗綾にとっては苦手な種の人間が多い部だ。生贄についてよく思っていない女子が多いのだ。それこそ、影でコソコソどころか、聞こえるような声で言われることも多い。
いつもはそこを通り過ぎる時だけ何となく早足になるのだが、今日は男の存在で忘れていた。彼もまた緊張感をもたらす存在だった。
「あー。あのカレシからもらったってやつ?」
「さっき外して、鞄の中に入れたと思ったんだけど……」
「ちゃんと探したの?」
「探したよ! でも、見つからないの、どうしよう……」
人探しになくし物、今日はそういう日なのかと思ってしまうが、紗綾には関係ない。
いつも通りさっさと部室に行こうと階段を上ろうとしたところで、彼がぴたりと足を止めた。
「すみません、ちょっと待っててください」
そう言って、彼は迷うことなく家庭科室に入って行ってしまう。
紗綾も慌ててドアの近くで様子を窺ってみることにした。
男について入っていく勇気はない。彼女達は紗綾の存在を決して歓迎しないだろう。