Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
 二人が階段を上がりきった ところで、前方からやってきたのは圭斗だった。
 そのオレンジ頭はよく目立つ。遠くにいてもすぐわかるせいで、最近は嵐に目印にもされていたりするほどだ。

「あ、先輩、遅いじゃな……」

 紗綾を見付けて笑顔になった彼は、ふと、固まった。
 その表情はすぐに険しくなる。じっと戒斗を見ている。

 時間にしてほんの数秒だと言うのに、やけに長く感じられた。

「カイト! てめぇ、何しにきやがった!?」

 爆発するように圭斗が声を荒らげた。

「自分から穴蔵から出てきたか、圭斗」

 やはり、圭斗と彼は知り合いのようだ。
 否、そんな軽い繋がりでないのは明らかだ。
 圭斗の険相、そして、戒斗の冷たい表情、今まで散りばめられてきた何かが磁石に引き付けられる砂鉄のように、集まっていく気がした。

「何でてめぇが先輩と一緒にいんだよ!?」
「大きな声を出すな、落ち着け」

 圭斗からすれば全く落ち着ける状況ではないのだろう。
 憎くて仕方がない、そんな表情で彼を見ている。
 自分に向けられているものではないのに、紗綾が恐くなるくらいだ。
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