Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
 煉獄――カトリック教に おいて死者が天国に入る前に火によって罪を浄化されると信じられている場所。天国と地獄の間。

 背中には地獄への扉、目の前には天使のような少年。
 その状況で紗綾はここが煉獄なのかもしれないなどと考えていた。
 けれど、少年が自分を天国に導いてくれる使者だとは思えなかった。
 馬鹿なことを考えているとは思うが、とにかく紗綾の頭は現実逃避しようとしていた。


「サヤ」

 笑顔を見せられると妙に緊張する。
 金縛りのように動けないが、手は扉に触れている。
 後ろ手に開けようとすれば可能だ。
 けれども、悪魔に助けを求めれば、天使はどうなってしまうのか。
 紗綾の脳裏に数々の犠牲者の影が浮かんだ気がした。
 顔も名前もよくわからないが、彼らは隣の部屋で日本文化研究同好会を名乗り、散っていった。
 存続していれば、この天使も喜んだかもしれないのに。
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