Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
 一刻も早く応接室から離れようとするかのように、将也は早足だった。
 手に力が入っている。
 そして、暫く歩いたところで、将也は漸く足を止め、離した。

「ごめん、少し強かったね」
「大丈夫です。その……ありがとうございました」

 ぺこりと紗綾は頭を下げた。彼がいなければ、今頃抜け出せたかはわからない。

「話、聞かなくちゃ、って思ったんです。でも……」

 大丈夫だと思っていたが、やはり彼女は魔女だったと言わざるを得ない。

「相変わらず、彼女はずるいね。隙を見せれば、洗脳しようとしてくる」

 肝心なところだけは絶対に教えてくれない。魔女毒島鈴子はやはりそういう人間でしかなかった。

「ついでに、っていうのもどうかと思うんだけど、俺の話も聞いてくれる?」

 そっと問われ、紗綾は頷く。彼の瞳は今でなければ話せないと言っているかのようだった。
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