Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「そうだね……黒羽母と黒羽兄だ」

 うんざりと香澄が頷けば、皆、信じるしかなくなったようだ。
 香澄は紗綾よりもずっと影響力や説得力を持っている。
 クラス委員が言って駄目でも、香澄が言うことは誰でも大人しく聞いてしまう。
 彼女自身はあまりそれをよく思っていないらしいが、陸上部の部長になってから、そういう立ち位置が確立してしまっている。

「久遠さんなら、去年も来てたよ?」

 皆も、特に女子は彼を知っているはずだった。
 オカ研の客寄せパンダとは彼のことだ。
 彼のおかげで紗綾と十夜が内職したグッズは全て完売した。誰もが、彼の作だと思ったせいだが、それに関しては今更白状するのも恐ろしい。

「あー、でも、去年はまだあそこまでじゃなかったでしょ。もっとナチュラルだった。もうちょっと髪短かったし、パーマとかかけてなかったと思うけど……」

 去年、こうしてやってきた時、彼の隣にいたのは魔女だった。だから、誰もが視線を逸らしていたのかもしれない。見れば呪われる、と。
 卒業して尚、彼女の呪縛は濃いものだが、同じオカ研関係者でもここまで扱いが異なると魔女に同情すら覚えてしまうのはなぜだろうか。
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