Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「おい、司馬! あんまりフラフラしてると、女子がキレるぞ」

 険しい表情で近付いてきたのは、今最も話題に上がっていると男と言っても過言ではないかもしれなかった。
 昨日のオープニングで演奏した三年有志バンドの一人佐野である。
 将也のクラスメイトで部活の部長仲間であり、紗綾も一応面識がある。

「だから、佐野に任せたんだよ」
「任されてもな……」

 佐野は困り果てた様子だった。

「ま、まさか、先輩、勝手に抜け出してきちゃったんですか……?」

 てっきり交代になったのだと紗綾は思っていた。

「そうそう気付いたら忽然と。目を離さないようにはしてたんだけど」

 してやられたよ、と佐野は苦笑いだ。

「すみません……」

 紗綾はシュンと俯いた。自分と約束をしたせいではないか。
 否、そうなのだろうと思ったからだ。
 そうでなければ、将也は忙しい時に無理に抜け出してきたりしないだろう。

「いや、君が謝ることじゃないよ。君は悪くない」

 将也が笑顔で「そうそう」と頷けば、佐野がジロリと睨む。
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