Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「でも、海斗のことも考えてくれてる」
「海斗さんだって苦しんでるから」

 苦しんでいることをわかっていながら彼を悪だと見放すことはできない。
 お人好しと言われようと彼は最早ただの他人ではない。紗綾の中では彼もオカ研のファミリーだ。

「そうなんスよね……わかってて、俺は何もできなかった。刺激するばっかりで、何の助けにもなれなかった」

 圭斗の傷もまた深いものだろう。何もできないことが彼の痛みだ。

「海斗が変わったのはあの人と付き合い始めた頃から。それまでは何とか……まあ、それなりに兄弟やってたんスよ」

 仲が良かったと言うほどでもないのか。照れ隠しなのか。

「海斗も見えたり聞いたことは匿名で警察に情報提供したりしてたけど、自分から首を突っ込もうとしなかった。見ないフリをすることもあった。サイキックなら他にもいたし」

 それで良かったのだろう。そうするべきだったのだろう。

「それが、あの人に出会って、深入りしたばっかりに……」

 圭斗の表情が暗くなる。全てが壊れたのはその時なのだろう。
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