Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「あの人が街を出てった時、正直ほっとしたんス。高校で先輩を見つけた時、本当に嬉しかった。この人なら、あんな思いをしなくてもいいと思った。霊的な作用っていう面では全く危なげないし」

 光のようでは大変だと紗綾も思う。霊媒となる方もそれを助ける方も。
 紗綾がいた一年の間、光は何度となく騒ぎを起こしたし、その間の嵐と十夜の気苦労も相当なものだった。
 その上、霊の姿が見えるだけの将仁や声が聞こえるだけのマリエが事件に首を突っ込むことがあった。
 魔女は容赦なく仕事を押し付けてくるし、黒羽オフィスの手伝いもある。

「最初は、本当に最初の一瞬は、救われたい一心でなんとしてでも落とそうって思ったんスけど、話してみたらすっかり心持ってかれた。話したら面白いし、俺のこと心配してくれてたみたいだし」
「だって、生贄だよ? 面白がってなるようなものじゃないし……」

 圭斗を心配するのは紗綾にとって当然のことだ。彼の高校生活を台無しにすることになるのだから。

「生贄連れてかないと自分が困るのに?」

 そう言われると返答に困ってしまう。
 嵐は『立ってれば絶対に大丈夫』としか言わなかったし、十夜は無言で生贄が見付かるまで戻ってくるなとばかりに黒いオーラを出すだけだった。
< 642 / 712 >

この作品をシェア

pagetop