Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
 目で追えば紗綾の足下にあるのはひらがなや数字、アルファベット等が書かれた紙だ。
 それから外国のコイン、香澄に言わせれば『こっくりさん』だが、十夜の私物だ。
 角張った細い十夜の字――つまり彼手作りの眷属との交信グッズだ。
 十夜自身は眷属の声を聞いて会話できるらしいのだが、交信内容を知らせる目的と、自分が独り言を言う不審人物でないことを示すために使っているらしい。

 コインがスルスルと床の上で紙を這い始める。
 それは紗綾も何度か見た光景ではある。
 けれど、十夜もいないのに、眷属がいるのだろうか。
 ピタリと止まったのは、『ま』と『む』の間、つまり『み』だ。
 紗綾がしゃがみ込むと、またコインが動き始める。今度は『さ』の位置、次に『き』である。
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