Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「まあ……そういうことだ」
「わかりません!」

 そんな答えがあるか。言葉の代わりに行動で示すタイプではあったかもしれない。
 言葉を面倒臭がる。どうせ、わかってもらえないと諦める。
 言葉を上手に伝えられない。どうせ、また伝えられないからと諦める自分と同じかもしれない。

「貴様はどうなんだ?」

 自分は言わない。けれど、人には言わせる。そういうことなのか。

「部長は卑怯です!」

 彼の腕の中で紗綾は憤慨した。

「そればかりだな」

 そうだ、自分はいつもそんなことを言っていたかもしれない。
 いつだって、肝心なことはごまかされてきた。

「部長が魔王って呼ばれる理由がよくわかった気がしてます」

 自分だけはそう思わないようにしようと思っていたこともある。彼は悪人ではない。嵐もそうだ。
 だが、自ら嬉々として策を弄する嵐は策士以外の何物でもなく、常に他人を威圧する十夜は孤独な魔王だ。
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