Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「もっと一緒にいたいです。でも、そうしていいかわからないんです。私には同じ世界が視えないから」

 他人と同じ世界を見ることが不可能だとはわかっている。彼とは根本的に見える物が違う。
 だから、彼は触れてはいけない禁断の箱のようだ。こうして彼から触れているのに、側にいてはいけないような気がする。
 彼が望んでいるとしても、肝心なところで彼の心が見えない気がして、一歩を踏み出せない。

「   」

 紗綾にしか聞こえない、そんな小さな声だった。
 その腕から逃れて、彼と向き合う。もっとはっきりと自分の目を見て、答えて欲しかった。
 珍しく顔を真っ赤にした彼は二度は言ってくれないだろう。
 それでも、確かに聞こえたのだ。
 だから、紗綾は今度は自分から抱き付いた。

「答えを聞いていないが」

 十夜の声には動揺が混じっている気がする。

「これが答えです」
「俺は言った」

 彼と同じことをしてみたというのに、不満げだ。
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