ラスト・エンジェル
部屋に戻って、リビングに面した部屋の扉をいつものように慌てて閉めながら…

あぁ、しおりがいないから、もう閉めなくてもいいんだぁ…

一人でつぶやいていた。

しおりはおしっこをトイレでできなかったから、ビニールのマットを敷いた部屋だけを、自由にさせていた。

扉の向こうの部屋にはビニールのマットは敷いていない。だから、いつも慌てて扉を閉めていた。

これまで、当たり前だったことが、これからはいっぱい当たり前でなくなるのだとその時、感じた。

しおりのいない部屋はとても寒く感じる。冬のせいだけではないように思う。

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