ラスト・エンジェル
図書館からの帰り道、後部座席にしおりがいないことに気付いた。

淋しさが込み上げて、それと同時に両親への憎しみが込み上げてくる。

逆恨みかもしれない。

でも、どうして、しおりを閉じ込めていた部屋を開けたのか。開けたならどうして、しおりのことを見ていてくれなかったのか…やっぱり逆恨みだ。

自分が2階の部屋にしおりを留守番させればよかった。

自分が出かけるのを我慢すればよかった。

…それでも、憎しみが込み上げてくる。

父と母、どちらが部屋を開けたのかわからない。だから両方に逆恨みしている。

しおりがそんなこと、望んでいないことは、わかっているのだけれど…当分、広島に帰る気になれそうにない。

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