人喰いについて
しかし、那智はその何かに恐ろしさを感じながらも強気に返した。
「お、嬢さんなんて…歳じゃないし」
そうだ、立派な19歳である。
世間から見ればたったの19歳なのだろうけど。
(……自分だって、そう変わらない見た目してるくせに)
「あははっ、……ごめんね、俺にとって君くらいの人は皆"お嬢さん"に思えちゃうんだ」
気を悪くしたようならごめんよ、嘘くさい笑みを浮かべた青年。なんだか馬鹿にされたようで腹立たしいが、青年の言うことには不気味さを感じる点があった。
「まるで……自分が凄く歳を重ねてるような言い方するんですね、」
那智は青年から一歩、後退りした。
笑みを深くした青年はなんだかとっても危険な気がする。
「君は面白いね。とても、面白い。
…そんなに警戒してるくせに、全然逃げることなんてしない」
寧ろ君は、怖れを受け入れようとしてる
青年が一歩、私に近づいた。
よく考えれば彼はこの雨の中、傘もささず何故こんなところに突如、"現れた"のだろう。そして何故、この青年の目は。
(あか、い)
「ーーーーー知ってる?雨の日は、"人喰い"にとって絶好の時なんだよ」
ヒクッ、と無意識で、喉が鳴った。