メモリ・ウェブスター
 あれから二日経った。私は雀の記憶を編む作業に注力した。丹念に一つひとつの記憶を編んでいく。雀が何を思っていたのか、あなたは本当に私の母なのか。なぜ、忙しそうにしていたのか、父親との関係はどうだったのか、娘の思いを編み込んでいく。
 家族というのは、面白いもので、近くにいながら、わかっているようで何もわからない。家族内で仮面を被り、外でも仮面を被る。食卓で一緒になる日は年々減り、会話もなくなっていく。それぞれが、それぞれの人生を生き、結局は血の繋がった他人と成り代わる。
 そのような人間達を、私はたくさん見てきた。
 家族とは本来、見えないところで繋がっていなければならない。ふと思い出したときに、子供が帰れる環境がなくてはならない。雀には居場所がないのだろう。あったとしても、学校、という檻のなかだ。
 雀の記憶で気になるといえば、直接彼女は会話には参加してないが、女性徒の会話を間接的に耳に入れたものだ。
「ねえ、トイレの事件知ってる?」
「小型カメラでしょ?」
「うちの学校やばくね?」
「でもさ、やばいって美学だよね」
「なにそれ?」
「え、だってさ、それだけで話し広がるじゃん」
「まじウケるんだけど」
「そう?でもさトイレにカメラってわたし達の下半身、教師とか警察関係者に見られてると思うと吐き気しない?」
「する。まじやだ」
「変態って、いるんだね」
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