Milky Way~壁の乗り越えかた~
「お、おい……」

指定された場所に着いた瞬間、わたしは思いっきり突っ込みたくなった。

「ご馳走してくれるにしてもさあ……」

その店は雑誌やテレビでよく見るフランス料理店で、芸能人がプライベートでよく来る場所としても知られている。

「琴音」

柱に寄りかかる義徳。

いつもの服装で着たわたしと違って、義徳は上等なスーツで決めていた。

「どういうつもりなの?義徳。たしかに奢ってくれるとは言ってたけど、こういう店だなんて……わたしはこんな服なのに……」

「それなら心配はないよ。ちゃんと用意してきた」

そう言って、義徳は有名ブランドの袋を突き出した。

「もちろん代金は要らないよ。サイズは怜央に聞いた」

「いつの間に……」

「琴音からの電話の後すぐ」

参った。

ここまでされたら断るなんてできない。

「分かった。着替えてくる」
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