Milky Way~壁の乗り越えかた~
「1年間、数学はこのように進めていきたいと思います。本格的に教科書に入るのは明日からですが、それまでに、今日渡したプリントを終わらせてきて下さい」

教師となって初めての授業。

苦手教科の代名詞といえる数学だけど、「嫌いでなくする」というのが当面の目標だ。

「さて、余った時間は中野先生の言われたとおり、質問タイムにしましょう。何か聞きたいことはあるかな?」

授業関係の質問でなければ、古今東西聞かれることは決まっている。

「先生って彼氏いるんですか?」

やっぱり、この質問は定番か。

「彼氏はいないけど……」

「マジで!?」「やった!」といった声が男子達の間から上がる。

これは、アイツには内緒だな……

「『彼氏』はいないけど、『旦那』ならいるよ」

「ええっ!?」

「すごい驚きようね。確かに、早いほうだとは思うけど」

「違いますよ、先生」

前の席の女子がそう言った。

座席表によれば、名前は巴雅。

「あれは、美人で若い先生が実は既婚者だったって知った落胆です。まったく、男子ってのは」
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