黒龍
楓の目からは
今にも涙が溢れ出しそうだ。
「…そうですか。
それは有難いです。
もう、
あたしに関わらないで。
生活費だけは送るので…」
と、
さっきの勢いは嘘のように
女も弱弱しくそう言う。
「い「結構です」
いいですと、
言おうとした
楓の言葉を今度は俺が遮る。
「中途半端に
親面しないでください。
それから、
恭介の親は俺たちなんで。
…行こう、恭介」
俺の脚にしがみつく
恭介の手をとり、
楓の肩を抱く。
「そういうことなんで。
今まで恭介のこと、
育ててくれて
ありがとうございました」
1度だけ深くお辞儀をし、
その場から離れる。