黒龍





分娩室に入ったのは
5時間前。





看護士さんから
連絡をもらった俺は

急いで病院に向かった。





…が、
分娩室からは
楓の叫び声が聞こえるだけ。




俺には祈ることしか
できなくて。









そんなとき、
小さな声が聞こえた。




「ぉぎゃー、ぉぎゃー」





それから、

出てきた先生からの






「おめでとうございます。

 元気な女の子ですよ」







床に膝をついた俺に、




「奥さんが待っていますよ」


と先生が言う。





「…はい」


俺は力なく答え、
弱弱しい脚に力を入れる。



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