黒龍
真っ黒な長い髪を
揺らしながら
気絶した男を日陰に運ぶ。
「何者なんだ…」
初めて会ったとき、
演技としか思いようがない
猫かぶりの甘い声。
あれはわざと
俺に嫌われるように出した声。
俺や遥を見たとき、
周りの女はきゃーきゃ叫ぶのに
あいつはこれっぽっちも
興味を持ってなかった。
いや、持とうとしてなかった。
それなのに急に甘い声出しやがって、
そんなのバレるに決まってんだろ。
そもそも、
獣牙と聞いても無反応な麗。
むしろ
俺の態度が気に入らなかったのか
麗から少しの殺気を感じた。
目を合わしても
瞳は一切揺らぐことなく
ひたすら真っ黒。
まるで光を嫌う闇のように。
俺は、
気づいたら
チャイムと同時に
教室に戻ろうとする
麗を追いかけてた…。
-駿side end-