季節に触れて
「あおっ、25番だって!」
後ろから部屋番号をお姉ちゃんが教えてくれる。
もう、ただ…ただ、マサヒロを守りたかった。
マサヒロがあたしに何と言おうと、あたしはマサヒロが傷つくことは望まない。
「っ…」
扉を開けて、その光景に唇を噛んだ。
声が出なかった。
また、一発…マサヒロが殴られる。
「やめてッーーーー!!」
劈く声に、周りが止まった。
「マサヒロッ!」
マサヒロのそばに駆け寄るも、
「来んな、」
低い、低い…そして冷たい声が響いた。
そして、
「あおっ!!!!」
お母さんの怒鳴り声があたしを襲った。
でも、でも…今は…
みんなの動きが止まった、今。
マサヒロは部屋を出て行こうと動き出した。
あたしとすれ違う時、あたしはマサヒロの方を見て名前を呼ぶ。
マサヒロは振り返らずにそのまま部屋をでていく。
「待って!!マサヒロッ!!」
慌ててマサヒロの腕を掴む。
立っているのが信じられ無いくらい、身体のあちこちにアザがあり、傷があって…
見てるだけで痛々しい。
そして、マサヒロは立ち止まって
疲れた声で言った。
「もう無理」
言葉が出なかった、
スルリと手から腕は離れ、マサヒロは歩き出した。
どうして、あたしは泣くことしか出来ないんだろう。