【完】キセキ~君に恋した時間~
俺が聞きたいのはそんなことじゃなく。
「なんで東京に来たんだよ」
「徹に会いたかったから?」
「嘘だ」
そんなのあり得ない。ていうか語尾が上
がってる時点で違うことが丸わかりだし
、仮にそうだとしても、だったらこの十
年間、何故会いに来なかった?
ふいに唐突、会いたい衝動に駆られた訳
でもあるまいし。
「……なによ。嬉しくないの?私が折角
ここまで来てあげたっていうのに!」
「そういう意味じゃなくて……。ただ、
理由を知りたいだけで」
「知ってどうするの」
そう言われた瞬間、そう、その一瞬だけ
、全てが止まった。
文字通り、"一瞬だけ"。
心臓も、今触れている空気でさえも、全
て。
───"何も訊くな"。