【完】キセキ~君に恋した時間~
消えるなんて。
消したくない。失いたくない。もう。
俺の前から、居なくならないで。
僅かに美海を抱き寄せる腕に力が入り、
美海がそれにピクッと反応したのがわか
った。
相変わらず細くて、折れてしまいそうな
身体。
まるで衰弱の一途を辿っているようなそ
れに、胸が締め付けられる。
「……そういうこと、言うなよ」
自分の声が、震えていた。
美海の身体も、震えていた。
「……もう…誰かを失うのは……やだ」
身近にいる人が居なくなったときの喪失
感。それはきっと、絶対に美海の方が思
い知っているはずなのに。
どうしてそんな風に、言うの。
どうしていつも、自分を蔑ろにする?