【完】キセキ~君に恋した時間~
「俺は嫌だよ……美海が消えるなんて」
そんなの、嫌だ。
美海が消えたいと願うのなら、俺がそん
な弱い美海を支えるから。
だから、お願いだから。
「……消えないで……」
雪の中の静寂で、泣き出しそうな自分の
声が、やけに鼓膜を刺激した。
「……だって…!意味、ないの……っ」
ドン、と俺の胸を押し返して、掠れた声
でそう言った美海。
俺の胸に両手を突きつけて、頭を下げて
いる。
「……東京に行きたいの。自由になりた
いの……っ!それだけを夢見て、ここま
で生きてきたのに!あの人は……っ」
キラリ。───うつむいた美海から、光
る雫が、落ちて。
「あの人は、私が幸せになることを許さ
ない……っ!自由を奪っていくんだ!」