【完】キセキ~君に恋した時間~
そう言われた気がした。
これ以上"こちら側"に踏み込むな。知っ
てあんたに何が出来る。ただの野次馬根
性のくせに、優しいふりをするな。
その一言には、そんな感情がまるで凝縮
されているような。
だからこそ。
「"あの人"と……何かあったの?」
そんな結論、導くまでもなく、容易に目
の前に放り出されたんだ。
俺の問いかけに、居心地が悪そうに、く
い、と眉根を寄せる美海。
それが肯定を表すことくらい、俺でもわ
かったのに───……。
「馬鹿な推測を立てないで。ただ、博人
(ひろと)さんに会いに来ただけ」
と言って、踵を返し、リビングの方へと
戻っていった。
博人さん、というのは俺の父さんのこと
で、岩手に住んでた時は、美海も交えて
、よく、一緒に遊んでいた。