【完】キセキ~君に恋した時間~
最初は入り組んだ道が多くて、訳がわか
らなかった東京の町も、もう随分と見慣
れた。
校舎からでて十分ほどの所に、寮がある
。同室の子は居なくて、一人部屋。
六畳ちょっとの小さめな部屋だったけど
、まるで外界から遮断されたようなその
空間が、ひどく落ち着く。
505号室に入って、鞄を乱暴にベッドに
放り投げてから、ブレザーを脱いだ。
それから冷蔵庫を開いて、野菜ジュース
を取り出す。これが今日の私の夕食。
ここ最近、全くといっていいほど食欲が
なく、お昼もヨーグルト一つとか、それ
くらい。
それに、自炊は苦手。ていうか出来ない
し。
だから夕食はいつも、飲み物とか、果物
とか……。
ふと、徹を思い出した。
そういえばアイツ、男のくせにすごい料
理上手だったっけ。