【完】キセキ~君に恋した時間~
夏休み、家出も同然のように上京したと
きに、ほとんどご飯は徹が作っていた。
それが思いの外美味しくて、ちょっとム
カついたんだ。
徹は、昔から……私が出来ないことを、
簡単にするから。
それが羨ましくて、疎ましい。
だからいつも徹をいじめてたのかもしれ
ない。
「……ほんと、ムカつく……」
鞄からケータイを取り出して、表示させ
た、徹の番号。
それを見つめながら、そう小さく悪態を
ついた。
なんで連絡してこないの?
いつだって、会いたいと思うのは私だけ
。会いに行くのも、私。
───そりゃ、あの冬の時は、徹から来
てくれたけど。でも、たったの一回きり
。
ムカつく。