【完】キセキ~君に恋した時間~
まあ、問い詰められる訳もないか。
"また、何かされたの?"なんて───…
…。
父さんだって気づいてるハズなのに敢え
てそれを確認しないのは、優しさなのか
なんなのか。
「それで、少し博人さんにお願いがある
んですけど───……」
ちょっと言いにくそうに、だけど僅かに
瞳をキラキラとさせながら、美海がそう
切り出した。
「ん?なにかな?」
「あの……、夏休みの間だけ、ここに住
まわせて欲しいんです」
……やっぱり。
まあ、なんとなく予想はついていた。中
3の所持金なんてたかがしれてるし、そ
れにあの大きな旅行バッグ。
まるでもうどこにも行くものか、とでも
言うように、部屋の隅に居座ってる。
父さんもわかっていたのか、にっこりと
笑った。
「いいよ。大歓迎だ」
そうして美海との同居がスタートしたん
だ。