【完】キセキ~君に恋した時間~
磯部が何故か慌てふためき、身振り手振
りで俺に何かを伝えようとしたのを、遮
った武野さんの声。
武野さんは、ちょっと悲しそうに笑って
いた。
「磯部くん……いいの、大丈夫。わかっ
てたし……そういう平等な所も、好きだ
から」
……なんの話だろう。
よくわからなくて、首を傾げていると、
武野さんはいつもの微笑みに戻った。
「磯部くんもレモン大丈夫だよね!明日
はとびっきり美味しいの、作るから!」
そう言って走り去っていった武野さん。
そして俺は、なんでか磯部に思い切り睨
まれていた。……何で。
「……なに」
磯部があまりにジトーッと睨んでくるか
ら、痺れを切らしてそう言うと、呆れた
ような眼差しを向けられた。
「鈍感!」