【完】キセキ~君に恋した時間~
あの子っていうのは、徹たちのマネージ
ャーの武野さんのこと。
武野さんが徹を好きなのは、初めてあっ
た時にすぐに気付いたし、そんな子と、
徹を一緒にさせるのは嫌だった。
私の知らない所で、二人が楽しそうにし
ているのを想像するだけで、胸が痛い。
だから、私も参加した。
案の定、武野さんは私の姿を見ると驚い
て、ちょっとだけ切なそうに笑った。
───いっそのこと、睨んでくれればい
いのに。
そうすれば、私だって心おきなく、闘争
心を燃やして、立ち向かうことができる
のに。
無駄に性格が良いから、感じたくもない
罪悪感まで募ってくる。
……でも、だからと言って、徹は渡せな
い。譲れない。
きっと徹が居ないと、私は壊れてしまう
から。
少し気まずい雰囲気のまま、始まった鍋
パーティー。といっても、気まずいと感
じているのは私と武野さんだけだけど。