【完】キセキ~君に恋した時間~
叶うわけのない願いに思いを馳せては、
現実に嘆いてしまうから。
そんな醜い女には、なりたくないから。
私は武野さんの痛いくらいに凛とした眼
差しから逃げるように鍋へと目を移した
。
ふと、視界の端に映った徹が、とてつも
なく愛しくて。
苦しいほど、切なかった。
病院は、苦手。
何故か人間味が感じられない。生きてい
る心地がしない、なんて思うのはきっと
私だけなんだろうけど。
病院に行くと、何故か怖くなる。
得体のしれない真っ黒な闇が、足元をな
め回し、蠢いているような錯覚さえ、覚
えるから。