【完】キセキ~君に恋した時間~
……いや、私の気持ちの問題か。
診察室に入ると、作られた笑顔と、嫌味
なくらいの白を纏った医師が私を出迎え
た。
鼻の奥を刺激する消毒液の匂いに眉を寄
せながら、用意された椅子に座った。
「こんにちは、倉科さん」
「こんにちは。ご無沙汰しております」
軽く会釈しながらそう言うと、はは、と
先生は小さく笑った。
「そんな畏まらなくても良いんだよ。そ
れで、最近はどうだい?調子は」
「良いですよ」
「ちゃんとご飯、食べられてる?」
「まあ、ほどほどに……」
前よりかは食べてる。
昨日だって、朝もパンを食べられたし。
お昼は……ゼリーだけだけど。
そんな私に、先生は困ったように笑う。