【完】キセキ~君に恋した時間~
何も、聞こえない。
ただ聞こえるのは、いつもよりもワント
ーン低い声と、鼻を啜る音。
「何───……いってんの?」
そんな冗談許されると思ってんの?
手が震える。足が震える。
『本当なんだよ。今朝……静かに、息を
引き取ったらしい』
嘘だ。そんなの。
視界が霞む。もう、何も見えなくて。
目頭が熱くて、頬を伝いながらその熱が
逃げていく。
それが、答えで。
脳内ではきっと理解してるんだろう。
美海が亡くなってしまった、事実を。
カツン、とケータイがコンクリートに当
たって落ちた。
「徹?」