【完】キセキ~君に恋した時間~





……それが、目的だから。



「……俺、行かない」



そう言った瞬間、ぐい、と強い力で引っ
張られて、無理やり立たされた。



俺は今、どんな顔を晒しているんだろう




きっととても、情けないに違いない。



「……馬鹿いってんじゃない!美海ちゃ
んのお葬式にお前が出ないでどうすんだ
!……最後くらい、見届けてやれよ」



父さんの、水分の混じった声が、やけに
耳に残って。



だから、嫌なんだ。



行ったら、最後だって実感してしまうか
ら。



もう触れることも出来ないんだと、嫌で
も思い知るから。



「徹……。美海ちゃんだって、きっと徹
に来てほしいと思ってるよ」






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