【完】キセキ~君に恋した時間~
「入った……」
俺は呆然と、リングをくぐったボールを
見つめてから、栄生君の方を振り向いた
。
「栄生君!入ったよ!」
うわどうしよう超嬉しい!!
どれくらい嬉しいかっていうと、汗だく
だとか、疲れだとか……そういうの、全
部吹き飛んでいくくらいに。
久しぶりな充実感と、達成感。そんな俺
に、栄生君も僅かに微笑んでくれた。
「おめでとう。徹君は、手首のスナップ
もよく効くし……多分、ちょっと腕力が
足りないだけなんだよ」
栄生君はそう言うと、俺の肩に手を置い
て、ニッコリと微笑んだ。
「これから俺が鍛えてあげるから、ぜひ
バスケ部においで。すぐにレギュラーに
なれるよ」
……どうしよう。栄生君は、ズルい。
こんな充実感、味あわせたら……。一度
蜜の味をしめたら、もう逃れられなくな
るような。
俺はとっくに、栄生君の罠に嵌まってし
まっていたのかもしれない。