【完】キセキ~君に恋した時間~
その姿にどこか見覚えがある気がして、
そう呟けば、驚いたように俺を見上げた
のは、何かに怯えたような、悔しそうな
顔をした、美海だった。
なんで……そんな、顔───。
「み……」
美海、と呼んでその肩に触れようとすれ
ば、そんな俺を振り払って、美海は逃げ
出した。
「美海!?」
そんな俺の叫びにも目もくれず、黒い髪
を靡かせながらどんどん小さくなってい
く美海。
「……ってぇ…誰だ?今の……って、徹
!?」
「ごめん磯部!また明後日!」
俺は目を見開いている磯部にそう言って
、美海の去っていった方向へと走った。
駄目なんだ。
ああいう時の美海を放っておいたら、駄
目なんだ。
小さい頃の記憶が、ふと、脳裏を掠めた
──……。