トワイライト
 因果応報――――。
原因があって結果が生まれる。それが真実。ならば今現在自分自身のその状況を不満に思い嘆く前に、まずはその事を回避する為の原因をいち早く見つけて、その解決の為の最大の努力をする事が正論である。ちなみに治子にとっては、まず自分が死ぬ前に自分が出来うる事の全てをやってから、死を迎える事こそが先決だった。




  かつて治子の幼馴染みである澪は、自分自身の親によって施設に預けられた。そして皮肉にも澪が生んだ理子もまた、澪が生活苦の為に施設に預けざるを得なかった。でもって理子は双子の姉妹である有を、乳児院に預けた。それは紛れもなく不幸の連鎖―――――――――。




 だが結果的に高階家の親子3代で繰り返されてきたこの事は、決して偶然で片付けてはいけない事なのだ。澪が宿命と言う名の人生を歩いていて、ふっと傍にあった池に何気なく放り投げたその小さな石の波紋が、だんだん大きくなり今、まさに治子が人生の終焉(しゅうえん)を迎える間際になって、その波紋の最後の余波が幼馴染みであった治子の心の中に届いた。




  それはなんと摩訶不思議な出来事なのだろうか?だがこの幼馴染みの澪から始まった不幸の連鎖は、もうこれ以上繰り返してはならないと治子は強く心の中でそう感じた。だが元はと言えば子供の授からなかった夏目夫妻が、乳児院から有を引き取った事が高階家のバラバラだった一つの家族の絆を、手繰(たぐ)り寄せた事になるのだ。
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