トワイライト
第１１章‐調査の反芻（はんすう）
　　此処はホテルのロビーの中にある喫茶店である。
そして美有は慎也と共にこの浜辺の見える喫茶店で休憩中であった。そこで美有は所在な気に考え事をしていた。




　　有は今や以前の恋人である隼人の事を完璧に忘れてしまっている。そして有の心は大雅に対しての揺るぎない愛情へとじょじょに変わり始めていた。それはまるで『一度溶けてしまったアイスクリームが二度と再び元の形には戻らない』のと同じように、もはやどんなに考えても有の心は隼人に戻る事はないだろうとさえ思われた。




　　たとえこの先奇跡的に有が記憶を取り戻したとしても。ではこの先どうする事が一番有にとって良い事なのだろうか？と美有は思った。そもそも美有が大雅から双子の自分の妹に間違われた事が発端で始まったこの有への追跡劇。それは紛れもなく自分には双子の妹がいる事を知るきっかけにもなった。





　　それはちょっとした縁であり、また運命の悪戯でもあった。だが多分自分は大雅からこのようにして双子の妹に間違えられていなければ、おそらくはこの先何も知らずに人生を終えていたかも知れないのだ。と、そう思うとこの事が一層美有にとっては意味のあるもののように思えて仕方がなかった。

< 223 / 321 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop