トワイライト
  そしてその後その神崎老人は私を犯した男性がその老人の孫だと知るに至ったのです。でもってその老人は昔気質(むかしかたぎ)で厳格な人でしたからどうしても孫の不実が許せず、その猛さんが犯した罪を執拗(しつよう)に連日攻め立てました。




  でも事が起こってからでは何事もすでに遅いのです。だってどんなに悔やんで反省をしたとしても、起きてしまったその事実は決してなかった事には出来はしないのですから。つまりその時に神埼老人はもっと冷静な気持ちになり、猛さんが犯してしまった罪と真剣に向き合うべきだったのです。でも神埼老人はその時よほど気が動転していたのか、ただ猛さんの事を一方的に叱るばかりでした。




  ちなみに神埼老人の猛さんに対する対応がもう少し緩ければ、あるいは猛さんは私達親子に対し誠心誠意心を砕いていたでしょう。あるいは私と猛さんは結婚をしていたかも?知れません。が、しかしその連日繰り返される神埼老人の攻撃は、決して緩む事はありませんでした。そんなだったから次第に行き場を失った猛さんの精神(こころ)は少しづつ歪(いびつ)に変化して往(い)き、ついにその精神は猛さん自身ではもはやコントロール不能になるまで追い詰められていったのです。




  そして猛さんはとうとう絶望的な気持ちになり何もする術(すべ)を見つけられないまま、ある日突然自分の部屋で首を括(くく)り自(みず)から命を絶ってしまいました。
< 230 / 321 >

この作品をシェア

pagetop