トワイライト

　　うーん。では何故理子はその時卑劣極まりないその男性との子供を生む気になったのか？もしかするとあるいは理子は子供をお腹に孕（はら）んだその時に、ごく自然に母親としての母性が芽生えて、子供を産む気になったのか？それとも子供を堕胎（だたい）する時期を逃（いっ）したのか？と色々と想像を巡らせてはみるが、どう考えても美有と慎也の二人には何故理子がその時に子供を産む気になったのか？と言うその肝心な動機までは解らず、結局のところその当時の理子の心理状態を、二人は計り兼ねた。




　　が、しかしその当時男性をそそのかした張本人の名前を聞き出す事が出来て、あるいは理子は犯人が解ったのではないか？すなわちそんな経緯でもって理子はむしろその男性に憎しみを抱く前に、瞳子に対して激しいまでの怒りを覚えたのでは？と美有は思った。




「ねえ、母が今現在間宮財閥の役員に名前を連ねていると言う事は、あるいは母は自分を襲わせた犯人の名前をその男性から聞き出し、瞳子だと解ってその時に瞳子に対して激しいまでの憎悪を抱いて、そしてその復讐の為に母は再度間宮家の血筋を引く日向さんに近づいたのかしら？」
　　と美有が慎也に聞いた。




「うん。それも一理あると思う。話の流れからするとそう言う風にも、考えられるよね。でもこの場合は果たしてそう言う仮説が、当てはまるかどうかはいささか疑問だな｣
　　と慎也は眉間（みけん）に手を当てながら、美有の質問にそう答えた。