ワイン恋物語
「根本奏留(ネモトカナル)です」

彼の唇から発されたハスキーボイスに、わたしの心臓がドキッと鳴った。

「…平岡、つぐみです」

声に意識してしまっていたせいなのか、自己紹介が遅れてしまった。

「じゃあ根本くん、平岡さんを頼むよ」

「はい、わかりました」

根本さんがペコリと頭を下げたのを確認すると、オーナーはどこかへ去って行った。

チラリと、わたしは根本さんに視線を向けた。

「んっ、どうしたの?」

根本さんと目があってしまった。

「い、いえ…よろしくお願いします」

まさか、目があってしまうとは思わなかった。
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