ワイン恋物語
「怖がってるじゃないですか」

「違います、急いでるだけです」

後ろに並んできた彼に向かって言い返した。

今思うと、これが初めて交わした彼――遠藤さんとの会話だったと思う。

男の人に臆病になっていたわたしには、わかる訳がなかった。


「つぐみ」

あのスーパーの会話から遠藤さんと親しくなり、彼はわたしのことを名前で呼ぶようになっていた。

「遠藤さん」

わたしは彼のことを名前ではなく、名字で呼んでいた。

「結婚しないか?」

遠藤さんのその言葉に、わたしは耳を疑った。
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