ワイン恋物語
何事かと視線を向けると、鬼のような恐ろしい顔でズンズンと歩く女性を従業員が止めようとしているところだった。

「何あれ、八つ墓村?」

女性の格好を見た根本さんはポカーンと口を開けた。

それもそうだ。

女性の格好は真っ白な着物、額には火のついたロウソクが2本とまるで角のようについていた。

左手には釘が刺さった藁人形、右手には金づちが握られていた。

映画の撮影でもしているのかと思った。

「何であの女と…!

わたしが彼と結婚するはずだったのに…!

何で…!

何で…!」

ブツブツと、まるで呪文を唱えるように女性の口が動いている。
< 46 / 100 >

この作品をシェア

pagetop