ワイン恋物語
「つー、立てる?」

差し出された根本さんの手にすがるように自分の手を置いた。

その手に支えられるように、わたしは立ちあがった。

従業員たちが会場に集まる。

わたしは根本さんに手をひかれるまま、その場を去った。

初めて、男の人の手にさわった。

大きな手だった。

わたしの小さな手を、あっという間に包み込んでしまった。

「つー、大丈夫?」

「…はい」

返事をしたその声は小さく、震えていた。
< 50 / 100 >

この作品をシェア

pagetop