吸血鬼の箱庭
「こんにちは!僕、花村夢って言います!よろしくお願いします!!」
青年、もとい花村夢は笑顔で腰を抜かしている落ちてきた青年に自己紹介をした。
「そんなことしてる暇じゃねぇだろ。
てめぇ、名は?」
「えと…柴田凛…です…」
「凛か。女々しい名だな。」
そうナイトが言うと、青年、凛は怒りに顔を歪め、頭を振りかぶった。
「あ!ナイト!!」
ガン!!
凛が思いっきりナイトの額に頭突きをおみまいした。
「ちっ…くそ餓鬼がぁぁ!!」
「うるさいわ!いきなり穴に落ちて、知らん餓鬼に胸ぐら掴まれて、挙げ句の果て"女々しい名"やと!?ふざけんな!ここどこや!?」
凛が溜め込んでいた感情を一気にナイトに吐き出す。
凛がナイトから離れ、なんとか逃げ出そうと、辺りをキョロキョロする。
「おい餓鬼。」
ナイトが凛の肩に手を置く。
「あんたも餓鬼やろっ!!」
その場が凍る。
一気に静まり返り、蝉の鳴き声がやたら耳に響くようになる。
「夢。」
「はい。」
先ほどまでにこやかだった夢の表情は、一気に凍りつき、能面のようになっていた。
「そのクソ餓鬼黙らせろ。」
「分かりました。」
夢がニヤリと笑う。
その笑顔は今までに感じたことのない恐怖を味わうほどだった。
一歩ずつ、その場にしゃがんでいる凛に近付く。
「はっ…?なんやねん…」
夢はゆらりと凛の前に立つと、凛の鼻に何かを近付けた。
「ゔっ……」
どさっ。
凛はその場に力無く倒れた。